【社会人向け】英語が上達しない本当の理由と科学的に効果的な勉強法

「毎日英語を勉強しているのに、なかなか上達しない…」 「英語学習の情報が多すぎて、何が正しいのか分からない…」
こんな悩みを抱えていませんか?
実は、英語が上達しない理由の多くは勉強量の少なさではなく、科学的に効果が証明されていない方法で取り組んでいることにあります。
書店やネットには英語学習法があふれていますが、その多くは「個人の成功談」です。ある人にとって効果があった方法が、自分にも当てはまるとは限りません。
この記事では、言語習得を科学的に研究する「第二言語習得論(SLA)」をもとに、社会人が英語学習に取り入れるべき科学的に効果が実証されたポイントを解説します。
私自身、日本生まれ・日本育ちで帰国子女でもありませんが、現在は外資系メーカーのエンジニアとして10か国以上の同僚・取引先と日常的に英語で仕事をしています。限られた時間の中でいかに効率的に英語を伸ばすか、常にアンテナを張ってきた経験から、「これは本当に使える」と感じたポイントだけをお伝えします。

SLAについて調べたら、科学的根拠に基づく効率的な英語学習方法のヒントがたくさん得られたんだ!

それ、すっごく気になる!!
- そもそも日本人が英語を苦手とする本当の理由
- 英語習得の成否を左右する3つの要因
- 科学的に効果が証明された英語学習のポイント3つ
- 社会人が今日から取り入れられる具体的な学習法

そもそも日本人が英語を苦手とする本当の理由
効果的な英語学習の方法を知る前に、まず「なぜ日本人は英語を苦手とするのか」を理解しておくことが重要です。
世界の英語話者のうち、英語を母国語とするネイティブスピーカーは約20%に過ぎません。残りの約80%は英語を第二言語として話す非ネイティブです。世界中に日本人と同じ「非ネイティブ」として英語を使いこなしている人は大勢いるのに、なぜ日本人は特に苦労するのでしょうか。
その大きな理由が、英語と日本語の「言語的距離」の遠さです。
第二言語習得論では、母国語と習得しようとしている言語が似ているほど(距離が近いほど)習得しやすいとされています。たとえばスペイン語を母国語とする人はイタリア語やフランス語を比較的早く習得できますが、日本語は英語と文法構造・語順・語彙のすべてにおいて大きく異なります。
これを裏付けるデータがあります。アメリカ国防総省外国語学校が公表している各言語の集中コースの期間によれば、英語ネイティブが習得するのにかかる時間は言語によって大きく異なります。
| カテゴリー(コース期間) | 言語難易度 | 言語 |
|---|---|---|
| カテゴリーⅠ(36週) | 比較的習得が用意な言語 | フランス語、スペイン語、インドネシア語 |
| カテゴリーⅡ(36週) | やや難易度が高い言語 | ドイツ語 |
| カテゴリーⅢ(48週) | 中程度の難易度の言語 | ペルシャ語、ロシア語、タガログ語 |
| カテゴリーⅣ(64週) | 習得が非常に難しい言語 | アラビア語、中国語、日本語、韓国語 |
(Defense Language Instituteのホームページより再構成)
英語ネイティブにとって日本語は最難関カテゴリーに分類されています。これはそのまま逆にも当てはまります。日本人にとって英語学習が難しく感じて当然なのです。
英語が思うように上達しなくても落ち込む必要はありません。ただ、それだけ難しい言語を習得しようとしているからこそ、科学的に効果が証明された方法で取り組むことが特に重要になります。

日本人にとってそもそも英語学習って簡単なものじゃないんだね!

そうなんだよ!難しく感じて当然なんだ!だから、出来ないことに落ち込む必要は全然ないんだよ
英語習得の成否を左右する3つの要因
第二言語習得論の研究によれば、英語習得の成否に関わる要因は主に3つあります。
- 学習開始年齢
- 外国語学習適性
- 動機づけ
【要因①】学習開始年齢
「英語は早く始めるほど良い」というのは事実です。
子どもには「臨界期」と呼ばれる言語習得に最適な時期があり、この時期に学ぶことでネイティブに近い発音や自然な文法感覚を身につけやすいとされています。
ただし、大人になってからでも英語は十分に習得できます。
臨界期を過ぎた大人は、ネイティブのような発音を完全に習得するのは難しい一方で、母国語の知識や論理的思考力を活かして体系的に学習できるという強みがあります。重要なのは「いつ始めたか」ではなく「どのように取り組むか」です。

正しいやり方で進めれば、十分大人になってからでも習得できるよ!
【要因②】外国語学習適性
年齢だけではなく、個人の適性も重要な要因と考えられています。
いわゆる、「向き・不向き」があるということです。
この適性は比較的安定したもので、一生の間にあまり変わることがないものとされています。
一方で、今からでも取り入れられる方法もあります。
それは、「外向的な行動」を意識的にとるということです。
「外向的な行動」が日常言語能力(自然に会話する能力)と強い相関があることが科学的に実証されています。つまり、外向的な行動をとっている人ほど、外国語の日常会話能力を習得しやすいということです。
外向的な性格ではなく、外向的な行動というところがポイントです。
性格はなかなか変えられなくても、行動は自分の意識次第で変えられます。積極的に話すという行動が、英語の日常会話能力を伸ばすのに重要ということです。

言われてみれば当たり前かもだけど、エビデンス的にも積極的に話すことが重要ってことだね!
【要因③】動機づけ(最も重要)
3つの要因の中で、社会人が最もコントロールできるのがこの「動機づけ」です。
研究によれば、動機づけは英語習得の成否に最も大きく影響するとされています。次のセクションで詳しく解説します。

この動機づけをうまく実践できれば、英語習得の成功確率をぐっと高めることができるよ!
英語が上達する人の「動機づけ」の特徴
動機づけには大きく2種類あります。
- 道具的動機づけ
- 統合的動機づけ
道具的動機づけ
英語を「手段・道具」として学ぶ動機です。
- 外資系企業に転職したい
- 昇進・昇給のため
- TOEICのスコアを上げたい
目標が明確なため短期間で集中して取り組みやすく、特定のゴールに向けて効率的に動ける特徴があります。
統合的動機づけ
英語そのものや英語圏の文化・人々への興味・関心から学ぶ動機です。
- 海外ドラマや映画を字幕なしで楽しみたい
- 外国人の友人と深く話せるようになりたい
- 英語圏の文化や考え方を直接理解したい
研究によれば、長期的な英語習得においては統合的動機づけが強い人の方が継続しやすく、最終的により高い英語力を身につける傾向があります。
結局、どんな動機づけが良いのか?:両方あることが理想的
第二言語習得論では、「道具的動機づけ」と「統合的動機づけ」のどちらが重要なのかが長いこと研究の中心課題でした。
動機づけに関する研究は、カナダの西オンタリオ大学のロバート・ガードナーが中心人物になるのですが、そのガードナーが出した結論は以下の通りです。
- 道具的動機づけも外国語学習の成功に結びつくが、効果は短期的なもの
- 長期的な学習においては、統合的動機づけの方が重要
- ほとんどの研究結果で、統合的動機づけの重要性が示されている
長期的な目線では、統合的な動機づけの方がより効果を発揮するということのようです。
確かに、道具的動機づけの場合、受験や就職など目的が達成されたら、一気にやる気がダウンしてしまうのは実感としても分かる話です。
そのため、英語学習のきっかけとして道具的動機づけを活用して、そのあと統合的な動機づけをもとに英語学習を長期的に継続していくことが理想的といえます。
外資転職という明確な目標(道具的動機づけ)を出発点にしながら、英語を使って仕事をすることへの純粋な楽しさ(統合的動機づけ)によって長期的な英語学習につなげる
私自身の経験でいうと、外資入社後に外国人の同僚と英語でアイデアをぶつけ合えたり、海外出張でスムーズにコミュニケーションできた体験が、英語学習へのモチベーションをさらに高めてくれました。英語は「使えば使うほど楽しくなる」という好循環が生まれます。
科学的に証明された英語学習の3つのポイント
ここからが記事の核心です。第二言語習得論の研究から導き出された、科学的に効果が実証されている学習のポイントを3つ解説します。
- 【ポイント①】インプットは英語学習の必要条件
- 【ポイント②】インプットに加えて、「アウトプットの必要性」が大事
- 【ポイント③】アウトプットのみの学習はNG、インプットに重点を置くことが重要
【ポイント①】インプットは英語学習の必要条件
言語学者スティーヴン・クラッシェンの「インプット仮説」によれば、言語習得には十分な量のインプット(読む・聞く)が不可欠です。
特に重要なのが「理解可能なインプット」という概念です。今の自分のレベルより少し難しいくらいの英語に大量に触れることが習得につながるとされています。
- 難しすぎる英語 → 理解できず習得につながらない
- 簡単すぎる英語 → 新しい習得が起きない
- 今の自分が7〜8割理解できるレベルの英語 → 習得に最も効果的
例えば、
- 中学・高校時代に使っていた教科書の英文で学習しなおす
- 自分がよく知っている分野・ジャンルのものを英語で聴いたり、読んだりする
- 内容が80~90%くらい理解できるレベル感の本や動画を見る
といったインプットがオススメです。

よく英語のニュースとか聞きまくって、内容全く分からなかったーってなってたけど、それは良くないってこと!?

そうだね、内容がある程度理解できるレベル感にした方が効果的ってことだね
【ポイント②】インプットに加えて、「アウトプットの必要性」が大事
インプットだけでは英語は話せるようになりません。
言語学者メリル・スウェインの「アウトプット仮説」によれば、実際に英語を使う(話す・書く)経験を通じて、自分の言語知識のギャップに気づき、より正確な英語を習得できるとされています。
重要なのは「アウトプットしなければならない状況に自分を置く」ことです。英語を使わざるを得ない環境に身を置くことで、自分に足りない表現や語彙が明確になり、その後のインプットがより効果的になります。
オンライン英会話や英語でのライティング練習など、定期的にアウトプットの場を作ることが上達を加速させます。
【ポイント③】アウトプットのみの学習はNG、インプットに重点を置くことが重要
ポイント①②を踏まえた上で、大切なことを一つ強調します。
インプットなしにアウトプットだけしても上達しません。
「とにかく話す練習をすれば英語は上達する」という考え方は、第二言語習得論の観点からは不完全です。十分なインプット(語彙・表現・文法の理解)の土台があってこそ、アウトプットが意味のある練習になります。
まずはインプットに重点を置きながら、同時にアウトプットの場も設けるというバランスが、科学的に最も効果的な学習スタイルです。
では、インプットとアウトプットの比率はどれくらいがいいのでしょうか。
「外国語学習の科学 -第二言語習得論とは何か」の著書の中で紹介されていた参考になる実験結果をご紹介します。
スペイン語学習に関する研究で、
- 70%: 聞く活動
- 20%: 話す活動
- 10%: 読み書き
というインプット重視の比率で授業をしたところ、アウトプット(口頭練習)を中心とした授業で学習した学生よりも読む・聞く能力は3倍のスピードで習得され、書く・話す能力も劣らなかったそうです。
この結果からも、やはりインプット重視の学習の方がより高い学習効果が望めることが分かります。
今日から取り入れられる具体的な学習法「コミュニカティブ・アプローチ」
第二言語習得論が推奨する学習アプローチとして「コミュニカティブ・アプローチ」があります。これは実際のコミュニケーションを意識して英語を学ぶ方法です。
文法や単語を机の上で暗記するだけでなく、実際に英語を使う場面を想定した練習を重視します。社会人のビジネス英語学習に特に相性が良いアプローチです。
コミュニカティブ・アプローチのポイントは以下の3点です。
- コミュニケーションの中から英語表現を学んでいく
- 単語単体ではなく、フレーズごと丸覚えして、そのまま使えるように練習する
- アウトプットだけはNG、必ずインプットも意識して使える表現の幅を増やしていく
具体的な学習方法①:シャドーイング(インプット)
英語音声を聴きながらほぼ同時に声に出して繰り返す練習法です。リスニングとスピーキングを同時に鍛えられ、英語のリズムや発音を体で覚えるのに効果的です。
ビジネス英語には、TED TalksやBBCニュースを使ったシャドーイングが特におすすめです。
- 単語単体ではなく、フレーズまるごと覚える
- 使う教材は難しすぎるのはNG、80%以上分かるレベル感のものから選択する
具体的な学習法②:オンライン英会話でロールプレイ(アウトプット)
実際に英語を話す機会を手軽に作れるのがオンライン英会話です。「フリートーク」より「ビジネスシーンを想定したロールプレイ」を積極的に選ぶことで、実務で使えるビジネス英語が身につきます。
外資入社直後、私自身も週2〜3回オンライン英会話を活用して、会議やプレゼンのシミュレーションを繰り返していました。

もしオンライン英会話のハードルが高いと思う人は、ChatGPTなどのAIツールを使うのも有効だよ

具体的な学習法③:マイオリジナル英単語帳を作る
学習方法①②を進めていく中で新たに学んだフレーズや英単語が出てくると思います。
そのようなフレーズ・英単語を一つの「オリジナル英単語帳」としてまとめておくと、より効果的にインプット学習を進めることができます。
ビジネス英語の語彙強化には、自分の業務に直結した単語・フレーズだけを集めたオリジナル単語帳を作ることも効果的です。

とは言っても、自作で英単語帳つくるのって結構時間がかかりそう…

ChatGPTとNotionを使えば、忙しい社会人でも簡単に短時間でオリジナル英単語帳を作ることができるよ!

まとめ
この記事で解説した科学的に正しい英語学習のポイントをまとめます。
- 日本人が英語を苦手とする最大の理由は、日本語と英語の「言語的距離」の遠さにある。
- 英語習得の成否に最も影響するのは「動機づけ」。道具的動機づけと統合的動機づけの両方を育てることが理想的。
- 科学的に効果が証明されているのは「理解可能なインプット」を大量に取り入れること。
- インプットなしのアウトプットのみの学習は非効率。インプットを重視しつつアウトプットの場も設けることが重要。
- コミュニカティブ・アプローチ(実際のコミュニケーションを意識した練習)が社会人のビジネス英語習得に効果的。
英語学習に「魔法の方法」はありませんが、科学的に正しい方法で継続すれば必ず上達します。この記事のポイントをぜひ日々の英語学習に取り入れてみてください。

この記事もぜひ参考にしてな!


ビジネス英語を体系的に学びたい方へ
科学的に正しい方法で英語学習を始めたいけれど、「何から手をつければいいか分からない」という方には、まずビジネス英語に特化した体系的なインプットから始めることをおすすめします。
Udemyで公開しているビジネス英語講座では、外資系メーカーで実際に働く私が、業務で本当に使う英語表現と外国人とのコミュニケーションのコツを2時間にまとめています。
「インプットに重点を置く」というSLAの考え方に沿って、まず外資系ビジネス英語の全体像をインプットするための最初の一歩として、ぜひ活用してみてください。

参考にした書籍
私が第二言語習得論に基づく効果的な英語学習方法を調べる上で参考にした書籍は、以下の2つです。
効果的な英語学習方法のヒントとなる情報がたくさん詰まっている書籍でしたので、ご興味がある方はぜひ読んでみてください。
- 「外国語学習の科学 ー第二言語習得論とは何か」 白井恭弘著
- 「言語はどのように学ばれるか ー外国語学習・教育に生かす第二言語習得論」 パッツィ・M.ライトバウン, ニーナ・スパダ著 白井恭弘、岡田雅子訳
