【エンジニア向け】外資系メーカーの研究・開発職のためのキャリア設計


外資系メーカーでの研究・開発職ってどんなキャリアが築けるのか気になるな~

実際に外資系メーカーでエンジニアとして勤務しているYukachiが解説していくよ!

外資系メーカーのエンジニアのキャリア
外資系メーカーのエンジニアのキャリアは、大きく2パターンあります。
「スペシャリストの道」か「マネジメントの道」です。

「スペシャリスト」とは、技術者として知識・経験を磨いていき、特定の分野のエキスパートとしてエンジニアの道を究めた人のことです。
メーカーには、基礎研究を担う部署と製品開発を担う部署があることが多いと思います。基礎研究部門である分野の技術を磨いていく人もいれば、製品開発部門で特定の製品の開発について経験を積んでいく人もいます。
いずれにしても、ある特定の分野・技術を究めて、その高い知識力・技術力で会社に貢献していくのが「スペシャリストの道」です。

「スペシャリスト」はエンジニアならではのキャリアかもね
一方、「マネジメントの道」は所謂マネージャー職としてキャリア形成をしていく道です。マネージャーとして組織の階層を上がっていくキャリアになります。

なるほど、「スペシャリスト」と「マネジメント」の2パターンがあるんだね

そうだね。他にも他職種への転身とかもあるけど、まずは「スペシャリスト」と「マネジメント」の2つについて詳しく見ていこう!
外資系メーカーでのスペシャリストのキャリアパス
スペシャリストとは…??
まずは、一般的なスペシャリストの仕事内容や特徴についてご紹介します。
スペシャリストの仕事内容と特徴
- R&Dのエキスパートとして、基礎研究や製品開発を行う
- 最新技術の開発、特許取得、学会発表などを行う
- 会社によっては博士号取得のサポートがあったり、社外の研究機関との連携が可能
具体的な役職例 ※役職名は会社によって異なる
- シニアサイエンティスト:特定分野の専門家として技術開発をリード
- プリンシパルサイエンティスト:より高度な技術戦略を策定
- フェロー/ディスティングイッシュドサイエンティスト:業界を代表する技術者(名誉職的な立場)
向いている人
- マネジメントよりも、専門知識を深めたい人
- 技術や研究に強い興味があり、最先端を追求したい人

要するに知識や技術を磨いて、研究開発職を究めていくキャリアだね
外資系メーカーでのR&Dの特徴
次に、実際に外資系メーカーのR&D部門で働いているYukachiが感じている、「外資系メーカーならでは」のR&Dの特徴について解説します!

日系メーカー勤務と迷っている人は特に参考になると思うから読んでいってね
外資系メーカーでのR&Dの特徴は以下の5つです。
- 海外のメンバーと一緒にプロジェクトを進めることが多い(英語力必須!)
- 開発した製品が海外で展開される可能性がある
- 海外出張や海外の拠点への転籍の機会がある…かも!?
- 日本の研究開発拠点の立ち位置によって仕事内容が変わる
- グローバル全体の組織体制によって仕事の自由度が変わる

どれも気になるな~!!

それぞれの特徴について詳しく見ていこう!
【特徴①】海外メンバーとの協働:英語力必須!
これは会社の組織体制によって程度は異なりますが、R&D部門の場合は他の職種よりも海外の拠点の社員と一緒に仕事をする機会が多い傾向があります。
例えば、基礎研究に関わっている人の場合、得られた成果を日本の研究拠点だけでとどめておくのはもったいないですよね。より成果を最大化させるためにも、海外の研究拠点とも情報を共有することは積極的に行なわれたりします。(逆に海外の研究拠点の最新情報を収集するのも大事な仕事です。)
また、製品開発において、日本国内にのみ販売する製品の場合は、そこまで他国との連携がないケースもあります。一方で、製品開発には多額のコストがかかるので、会社としては新たに開発された製品は世界展開したいと考えることが多いです。そのため、グローバルプロジェクトになるケースも少なくなく、その場合は当然海外のメンバーと協働してプロジェクトを進めることになります。

海外メンバーとの協働の頻度は会社の方針や自分の所属する部門によって左右はされるけど、外資系メーカーでエンジニアを目指す人は英語力を磨いていて損はないよ!

やっぱり英語力は求められるんだね~
【特徴②】開発した製品が海外で展開される可能性がある
【特徴①】でも触れた通り、外資系メーカーでの製品開発プロジェクトでは、
「開発された国の市場をメインターゲットにしている」場合と
「グローバル全体での販売をターゲットにしている」場合があります。
前者は、国それぞれで嗜好・文化が異なるため、市場の特徴に合わせて各国で製品開発するケースのことを指します。消費財とかはこのケースが多いですね。
後者は、他の国でも共通の需要があり、海外展開できるケースを指します。会社としては同じ製品開発のコストをかけるのであれば、より大きい市場をターゲットにしたいため、海外展開できる見込みがあるときには、グローバル全体をターゲットに製品開発を行います。
もちろん、会社の方針によって影響を受けるところですが、製品開発プロジェクトを進める際にターゲットとする市場が大きいことに越したことはないので、やはり開発した製品が海外に展開される可能性は少ないないです。

製品開発に携わる身としては、日本だけでなく海外にも展開されるのはすごくやりがいを感じるよ
【特徴③】海外出張や海外の拠点への転籍の機会がある…かも!?
これまでお話してきた通り、R&D部門では海外のメンバーと一緒に仕事をしたり、海外市場に向けて製品開発することがあります。
そうなると、やはり仕事の中で海外出張が発生するケースもあります。

海外の工場で製品の製造試作なんてパターンもあるよ
海外出張と比べると頻度や可能性はかなり下がりますが、自分の実力が認められた場合は海外の拠点へ転籍するケースもあります。

えっ!!そんなことあるの!?

もちろんかなり稀なケースではあるけど、私の周りでも数人、本社などの海外の研究開発拠点に転籍したよ。

そうなんだ!なんか夢あるな~!

そうだね!ただ、やっぱり転籍された方々はみんなとても優秀だったよ…!!周りが認める実力と運が必要なんだ。
【特徴④】日本の研究開発拠点の立ち位置によって仕事内容が変わる

これまであげた特徴はポジティブな内容だったけど、これからあげる特徴は少しネガティブな内容かも…。
日系メーカーのR&D部門の場合は、グローバル企業であったとしても、当然日本が研究開発の中心であるケースがほとんどだと思います。
しかし、外資系メーカーの場合は逆に本社がある国が研究開発の中心となることが多いため、日本のR&D部門がどれくらい活動的に研究開発に携われるかは、その会社の組織体制や方針によって左右されます。
外資系メーカーであっても、ある程度の規模の研究開発拠点が日本にあり、それが会社の中でも影響力のあるのであれば、日系メーカーと変わらない環境で基礎研究や製品開発業務ができます。
一方、研究開発拠点があってもすごく限定的で小規模な場合や、そもそも研究開発拠点でない場合は、本社や他国で開発された製品をそのまま輸入し、日本のR&D部門は現地で必要な技術的なサポートのみの場合もあります。
同じエンジニアとして働いていても、この両者では業務内容にかなり違いがあります。

どちらが良い悪いということではないけれども、日系メーカーのR&D部門を想像して入社すると「こんなはずでは…」ということにもなりかねないから、よく調べることをおすすめするよ!
これは余談ですが、外資系メーカーでは急に組織体制や事業縮小・撤退が起きることはよくあります。実際に、「日本のR&D部門の〇〇グループをクローズします。」なんてことがYukachiの周りでも何回も起きました。
そうなると例えば入社時に「基礎研究バリバリやるぞー!」と思っていたのに、入社して数年後そのグループが取り潰されできなくなった…とかがあり得るわけです。
日系メーカーも今後このようになる可能性はありますが、現時点ではやはり外資系メーカーの方がこのような急な変更は多い傾向があります。

安定志向の人は日系メーカーの方が無難かもしれんな~
【特徴⑤】グローバル全体の組織体制によって仕事の自由度が変わる
【特徴④】と関連したお話になりますが、グローバル全体の会社の組織体制によって日本のR&Dの裁量権の大きさが異なります。
日本の裁量権が大きい場合、日本国内で研究開発のプロジェクトを立ち上げ、製品をローンチすることができます。このとき、プロジェクトの承認者は日本国内のレビュアーになり、本社を通す必要がありません。
一方で、日本の裁量権が小さい場合は、本社の承認なくして自由にプロジェクトを進めることはできません。当然、プロジェクトを進める上での承認者は本社のレビュアーになります。
この場合、他国でも製品開発プロジェクトがあがってくるので、日本のプロジェクトを通すためには、グローバル全体で動いているプロジェクトたちと戦わなくてはなりません。
当然、後者の方が日本のR&D部門の自由度は小さくなります。

これも日系メーカーとの大きな違いだから、入社前に確認した方がサプライズがなくて安心かも

外資系メーカーの組織体制について詳しく知りたい人はこの記事もチェックしてな!

外資系メーカーでの特徴を踏まえて…
このように、外資系メーカーならではのメリットやデメリットがあります。
大事なのは、日系メーカーとの違いを理解し、自分に合う方を適切に選択することです。
また、対日系メーカーだけではなく、外資系メーカーの中でも組織体制によってR&D部門の業務内容は大きく変わってきます。
外資系メーカーでエンジニアとして働こうとしている方は、
- グローバル全体からみて、日本の研究開発拠点の規模や立ち位置はどうか?
- 本社や他の研究開発拠点との関係性は?
- 製品開発プロジェクトを進める上でのレビュアーはだれになる?
といった視点で確認してみると、より深く仕事内容が見えてくるかと思います。

これから外資系メーカーにエンジニアとして転職を考えている人はチェックしてみてね
外資系メーカーでのマネジメントのキャリアパス
さて、ここからは「マネジメントの道」を選んだエンジニアが進むキャリアについて説明します。
エンジニアからマネジメントの道に進む場合は、通常R&Dの中のグループや部門をマネジメントすることがほとんどです。(もちろん、他職種に異動した場合は、その部署をマネジメントすることになります。)
こちらにエンジニアの「マネジメントの道」のキャリアパスをまとめてみました!

階層が上がるごとに、マネジメントする対象の規模が大きくなっていきます。それに伴い、管理する内容が複雑になっていき、高い交渉力と調整力が求められます。
それと同時に外資系メーカーの場合は、高い英語力も求められます。

やっぱり英語力は必要なんだね…!!

そうだね、マネージャーの場合は複雑な交渉や調整を英語で行う必要があるから、場合によってはスペシャリストよりも高い英語力が求められるよ!

外資系メーカーで求められる英語力についてはこの記事も参考にしてな!

また、外資系メーカーの場合、エリアごとの視点でマネジメント業務を見てみると外資系メーカーならではの特徴が見えてきます。

日本法人でのマネジメント
日本で外資系メーカーに勤める場合、大多数の人が日本法人の中でキャリア形成していくことになります。
日本法人でエンジニアからマネジメントの道に進む場合、一般的には日本法人の中でのプロジェクトや部門を指揮・管理していきます。
そして、最終的には日本の技術部長などのポジションを目指していくことになります。

ここまでは日系メーカーと近いかな
ここで、外資系メーカーならではの特徴を3つ挙げます。
- グローバルと日本法人との架け橋としての役割がある
- 自分の上司は外国人、部下は日本人のパターンが多い
- 高い英語力が求められる
【特徴①】グローバルと日本法人との架け橋としての役割がある
外資系メーカーのマネージャーの大切な仕事の一つが、グローバル戦略の意向を理解し、それに沿って自身の部門・グループを指揮していくことです。
会社全体として同じ方向を向いてビジネスを進めていくために、各拠点が会社の方針を理解して動くことが求められる。その責任の一端を担っているのが、各拠点のマネージャーたちです。
そのため、マネージャーたちはグローバルの動きに対して常にアンテナを張って、得た情報を自身の部門やグループに展開して、メンバー全員がグローバル戦略に沿って動くよう指揮をとるわけです。
このように、外資系メーカーのマネージャーはグローバルと日本法人との間をつなぐ重要な存在なのです。
【特徴②】自分の上司は外国人、部下は日本人のパターンが多い
【特徴①】でご説明の通り、日本法人のマネージャーはグローバルと日本法人をつなぐ存在のため、自分の上司は外国人で、部下は日本人のパターンが多いです。
これは、組織の規模や組織形態にもよるところですが、日本法人の中で昇進すればするほど、上司が外国人になる可能性は上がっていきます。
また、自分がマネジメントする対象は日本法人の中であることが多いため、部下は日本人が多くなります。
【特徴③】高い英語力が求められる
これまでのお話からも分かる通り、マネージャーはグローバルとの接点が多くなるため、英語を使う頻度が増えます。
また、昇進すればするほど、管理する内容が複雑になっていき、部門間の調整も求められることから、英語での高いコミュニケーション力が求められます。
そのため、日常会話ができる…というレベルでは足らず、きちんとしたビジネス英語力が必要になるのです。
リージョンでのマネジメント

ここから紹介するのは、日本法人の枠を超えたグローバルキャリアになるよ
会社の規模にもよりますが、ある程度の規模の外資系グローバル企業の場合、APAC, 北米、EMEA…などリージョンでまとまってマネジメントされることが多いです。
例えば、日本法人の技術部長の上司は、APACリージョンの統括技術部長だったりします。
このリージョンでのマネジメントが、日本法人でのマネジメントのさらに先のキャリアとしてあります。
リージョンのマネジメントについて詳しく説明するため、ここでも特徴を3つ挙げます。
- 複数国・複数拠点をまたいでマネジメントする
- 地域戦略の立案と実行責任が求められる
- 文化・言語を超えたリーダーシップが必要
【特徴①】複数国・複数拠点をまたいでマネジメントする
例えば、APACのリージョン統括技術部長の場合、日本、韓国、シンガポール…などのAPACの国々の技術部全体をマネジメントすることになります。
各拠点のマネージャーからのレポートをもとにマネジメントしていくことになります。
【特徴②】地域戦略の立案と実行責任が求められる
本社からのグローバル戦略に基づき、その地域での製品開発・上市のプランを策定し、それを実行していくのがリージョンのマネージャーの大切な役割になります。
各国のローカルの法規制、競合状況、顧客ニーズなどの情報を各拠点のマネージャーたちと連携しながら収集し、総合的に分析し判断する必要があります。
また、本社からリージョン全体での売上目標などが設定されるため、それが達成できるよう立案していく必要があります。
【特徴③】文化・言語を超えたリーダーシップが必要
複数の国をマネジメントする必要があるため、部下も様々な国の人になります。また、自分の担当するエリア全体の戦略を立案するためには、各国の文化や背景を十分に理解している必要があります。
そのため、単純な英語力だけではなく、異文化理解力や人種を超えた対話力など高度なコミュニケーション能力が求めらるのです。

高度なマネジメント能力とコミュニケーション能力が求められるんだね!でも、どうしたらこの役職に就けるのかな??

Good questionだね!世界中の優秀な人がこのポジションを狙っているから難易度はすごく高いけど、日本人でもチャンスはあるよ!
日本人がリージョンの統括マネージャーに就くにはどうすればよいでしょうか。
色々なアプローチ方法はありますが、一番の近道は日本にリージョンの拠点がある会社にいくことです。
近年では、アジアのリージョンの拠点としてシンガポールや香港あたりが選ばれることも多いですが、業界によっては日本も大きいマーケットになるため、日本にリージョンの拠点を置いているケースもあります。
その場合、日本人がリージョンの統括マネージャーに選ばれる可能性は高まります。

グローバルの中で日本の立ち位置が高い業界や会社を選ぶと可能性が上がるよ
リージョンの拠点が日本でない場合は、社内で自分を売り込み、会社でのVisibilityをあげていくことが重要です。そのとき、日本法人内や上司に対してだけでなく、グローバルのキーパーソンに対して届くようにアピールすることがポイントです。
そうすると、リージョンのマネージャーのポジションが空いたときに声がかかり異動できる可能性が上がっていきます。

周りにリージョンのマネージャー職に興味があることを宣言するのも有効だよ。

外資系でも社内政治みたいなのって必要なんだな~

うん、全然あるよ!特にグローバルポジションの獲得には戦略的に動くことがすごく大事になってくるよ!
また、荒業にはなりますが、一度現地法人をやめて、外部にオープンになっているグローバルのポジションに再度申し込むというやり方もあります。
その際、MBAや留学を挟むのも有効なケースがあります。
本社でのマネジメント

可能性はゼロではないけど、これはかなり難関なエリートコースだね…。
外資系で日本人がここまで登りつめるのはかなりレアケースにはなりますが、リージョンのマネージャーの先にExective Levelとしてグローバル全体をマネジメントするキャリアがあります。
日本法人から登りつめるパターンが他に、現地人と同じ窓口で直接本社に就職するパターンもあります。
ただ、ビザの問題もあるため、現地の人を押しのけて日本人が採用されるためには、相当な実力と経歴が求められます。
まとめ:外資系メーカーのエンジニアには「スペシャリスト」と「マネジメント」の道がある!
この記事では、外資系メーカーの研究・開発職として働くエンジニアのキャリアについてご紹介してきました。
外資系メーカーのエンジニアには、「スペシャリスト」と「マネジメント」の2つの道があり、それぞれ外資系メーカーならではの特徴や求められるスキルセットがあります。
「スペシャリスト」と「マネジメント」の違い、日系メーカーでのキャリアの違いを理解した上で、自分に合ったキャリア選択してくださいね。